光励起半導体レーザ(OPSL)が15万台を突破し、さらに増加中

Coherentのマイルストーンは、光励起半導体レーザ(OPSL)の永続的な優位性を実証しています。

 

2023年11月7日、Coherent

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当社が2002年に最初の光励起半導体レーザ(OPSL)(488 nmブルーサファイアレーザ)を発売したとき、それは大型で電力消費の大きいイオンレーザの単なる代替品でした。しかし当社は、この独自の利点を持つ革命的な新技術がそれだけにとどまらず、可視光レーザ(最近では紫外線)の既存のアプリケーションおよび将来のアプリケーションの多くについて、状況を変える可能性があると信じていました。このたび光励起半導体レーザ(OPSL)の製造台数が15万台を数え、この技術は20年前のきわめて楽観的な予測をも上回る成功を収めています。

現在、当社の光励起半導体レーザ(OPSL)は、血液分析(フローサイトメトリーを使用)から顕微鏡検査、遺伝子配列解析、ホログラフィ、半導体検査、レーザライトショー、その他多くの例に至るまで、幅広い用途で使用されています。そして、これらのアプリケーションの一部において、これらの光励起半導体レーザ(OPSL)がゴールドスタンダードとなっています。 

それでは当社の光励起半導体レーザ(OPSL)技術が、市場でこの驚異的な成功を収めている理由は何でしょうか。 

それは1つではありません。むしろ、光励起半導体レーザ(OPSL)が複数の独自の利点を兼ね備えているからです。具体的には、この技術は出力拡張が可能で、257nm~1154nmのすべての波長のレーザ光源を実現でき、本質的に出力の光ノイズを低減します。光励起半導体レーザ(OPSL)を選択する根拠はアプリケーションによって異なりますが、通常はこれらの重要な属性の1つまたは複数に基づいています。これらを1つまたは2つのアプリケーションの例で見てみましょう。

 

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光励起半導体レーザ(OPSL)とは

光励起半導体レーザ(OPSL)では、1つまたは複数の半導体レーザが電力を赤外線レーザ光に変換し、この赤外線レーザ光を使用して薄い半導体チップを励起して、そのチップの前面からレーザ光が放射されます。この薄いチップはヒートシンクに取り付けられており、非常に効率的に冷却されます。この利得チップの周囲には小型の外部共振器が構築されており、それによって高性能の円形出力ビームが実現し、小さなスポットへの集光や光ファイバーへの結合を容易に行うことができます。

波長のスケーラビリティ。出力波長は半導体利得チップの組成の詳細に依存します。これらの詳細を変更し、得られる出力の高調波変換を使用することで、レーザ波長を355 nmから可視光全域、そして赤外線まで、広い範囲で調整できます。これは、ガスや結晶を使用した古いレーザ技術が、ガスや結晶の物理学に固有のいくつかの任意の波長でしか発光できないのとは明らかに対照的です。この波長のスケーラビリティは、バイオ装置組込みに大きなメリットをもたらしており、この分野において光励起半導体レーザ(OPSL)は現在、多数の色素や蛍光タンパク質の吸収特性に最適に適合する波長で提供されています。 

出力のスケーラビリティ(および出力調整)。光励起半導体レーザ(OPSL)設計の出力は、ミリワットから数十ワットまで簡単に規模を調整できます。代替技術である結晶ベースのレーザ(ダイオード励起固体レーザ、LD励起固体レーザなど)では、結晶内の不均一な加熱により、熱レンズと呼ばれるものが発生するため、積極的に冷却された端面に比べて中央部が高温になります。結晶ベースのレーザでは、このような温度勾配による強い集束/非集束効果により、出力調整能力が制限されます。 

このように、熱レンズ効果によって高出力の生成が制限されるため、ビーム特性の最適化は狭いパワーウィンドウに制限されます。これに対し、多くの光励起半導体レーザ(OPSL)の出力は、ビーム形状や指向方向を変更することなく、10%未満から100%までスムーズに調整できます。高出力レーザが大規模で壮観な屋外ディスプレイを映し出すライトショーは、出力のスケーラビリティを活用したアプリケーションの代表例です。一方、出力調整は多くの顕微鏡アプリケーション、特に顕微鏡内の正確なアライメントを維持したまま出力を「微調整」する必要がある「超解像法」において威力が発揮されます。

低い出力ノイズ。光励起半導体レーザ(OPSL)とほとんどの結晶(LD励起固体)レーザはいずれも、利得媒質が最初に近赤外線レーザ光を発生し、高調波結晶を用いて効率よく可視光や紫外光に変換します。しかし、結晶ベースのレーザでは、この高調波の生成により、しばしば「グリーンノイズ」と呼ばれる出力ノイズが発生します。グリーンノイズと呼ばれるようになったのは、グリーンLD励起固体レーザの問題として最初に確認されたためです。しかし光励起半導体レーザ(OPSL)では、グリーンノイズを発生させるメカニズムは皆無です(レーザ物理学用語で言えば、「利得チップの上部状態寿命がゼロ」だからです)。もちろん、光ノイズの低いLD励起固体レーザを製造することはできますが、複雑さとコストが増します。それに対し、光励起半導体レーザ(OPSL)ではレーザは自然に光ノイズが低減されます。フローサイトメトリーは、この光ノイズの低さが大きな利点となるアプリケーションであり、いわゆるデータのCvで測定されるデータ品質が直接的に向上します。 

 

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OBISレーザは、円形の集光スポットでM2 ≤ 1.2を実現します。

 

その他の利点。これらの重要な技術的差別化要因に加えて、光励起半導体レーザ(OPSL)技術は容易に小型化できるため、高い出力対サイズ比が得られ、システムの小型化を求める顧客ニーズの高まりに対応しています(一例として、当社では52 x 27 x 13 mm(2.05 x 1.06 x 0.51インチ)の小型のOBIS COREレーザを提供しています)。光励起半導体レーザ(OPSL)技術は電気効率に優れ、このことは多くの分野で環境に優しいテクノロジーを推進する上でますます重要になっています。また前述のように、光励起半導体レーザ(OPSL)はきれいな円形ビームを生成できます。これらの追加の利点は光励起半導体レーザ(OPSL)に特有のものではありませんが、多くのアプリケーションにおいてこの技術の成功を左右するプラス要因となっています。

波長と出力のスケーラビリティに優れているため、非常に汎用的なレーザ技術として利用でき、重要な各アプリケーションに特化したさまざまなフォーマットで構成できます。このことは、現在Sapphire、Verdi、Genesis、Taipan、OBISなど、人気のあるファミリーを含むCoherentの幅広い製品ラインに反映されています。

光励起半導体レーザ(OPSL)は、半導体レーザやLD励起固体レーザなどの他の技術を補完します。アプリケーションよってはこれらの技術の方が適切な場合もあります。そのため、Coherentは3種類のレーザすべてを製造しています。またCoherent VerdiCoherent OBISなどの製品ラインでは、これら3つの技術を同じパッケージ、同じインターフェイスで提供しています。

しかしアプリケーションにおいて、可視光または紫外光スペクトル内のいずれかの波長のCWレーザで、ミリワットから数ワットの出力に対応し、コンパクトで効率的かつ信頼性が高く、円形ビームを生成し、出力を調整できる必要がある場合、光励起半導体レーザ(OPSL)はこれをすべて満たす唯一のレーザです。

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