ホワイトペーパー

強力な技術により1兆フレーム / 秒という驚異的なスピードで単一の超高速イベントを画像化する

概要

STAMP(Sequentially Timed All-optical Mapping Photography)では、Coherent Astrellaを使用して100 fs以下から数nsのタイムスケールでビデオバーストをキャプチャします。この技術により、たとえばテラヘルツ波の発生と伝播(100 fs以下のタイムスケール)、レーザアブレーションにおけるプラズマダイナミクス(1 ps以下)、水中衝撃波(1 ns以下)などの研究が可能になります。

Astrella

高速度イメージング方式の必要性

超高速な現象を可視化する方式として、従来はポンププローブ方式が使われてきました。この技術では、レーザパルスで研究中の試料を励起し、特定の短い遅延の後にプローブパルスでスナップショットイメージを取得します。次にこの遅延量を順次増分して一連のショットを撮影し、動画を作成します。とはいえ、これは便利で強力な技術ではありますが、試料を励起するたびにスナップショットを1枚しか取得できないため、反復しても一貫して一様に繰り返されるイベントのイメージングだけに適しています。

中川桂一助教(東京大学)は、音波や光と物質、特に生体組織との相互作用を何らかの形で含む多様な研究プロジェクトを推進するグループを率いています。このグループは数年前、音響波面の伝播など、単一の(繰り返されない)非常に動的なイベントの超高速ビデオストリームを生成する方法が必要であることに気付きました。彼らはこのニーズに適合するSTAMPを開発しました[1]。

このグループは数年前、音響波面の伝播など、単一の(繰り返されない)非常に動的なイベントの超高速ビデオストリームを生成する方法が必要であることに気付きました。彼らはこのニーズに適合するSTAMPを開発しました。

 

仕組み

STAMPの基本原理の概略を図1に示します。STAMPは、Coherent Astrellaチタンサファイアのフェムト秒増幅器の広いスペクトルバンド幅と十分なパルスエネルギーを利用します。まず、チャーピングによってフェムト秒パルスの延伸または分割のどちらかあるいはその両方が行われ、試料に照射する別々の波長成分が、遅延時間をずらした上で試料に到達します。中川助教はこの部分を「テンポラルマッピング」と呼んでいます。

試料を通過した後、各サブパルスは波長ごとに分離され、(CCDまたはCMOS)カメラアレイの特定の領域に照射されます。結果として各領域は個々のビデオフレームになります。このように、レーザパルスと検出器は、高速ストロボ照明とイメージングデバイスのように機能します。

Figure 1

図1 : STAMPによりレーザパルスは別々の波長(したがって時間遅延になる)のサブパルスに分割されます。ターゲットに照射後、サブパルスは分離され、カメラアレイに記録されます[1]。

 

STAMP性能の拡張

中川グループは、元々の技術の開発当初からSTAMPの機能を拡張するために、3つの方法で技術革新を続けてきました。拡張の1つの方法は、パルスのテンポラルマッピングのより巧みな技術を開発することです。元々は、ガラスの棒やファイバーが持つ自然な分散を利用してテンポラルマッピングを実現していました。しかし、この方法ではビデオのタイムスケールがピコ秒以上のイベントに限定されてしまいます。

彼らは最近、ナノ秒のタイムスケールでイベントを測定するために「スペクトラム回路」と呼ばれる光学デバイスを開発しました。この方式では、光パルスは空間的にチャープされてからトラップされ、4個のミラーによって作成されたパスを循環します(図2を参照)。光がそこから出るまでの周回数は波長によって変わります。したがって、いずれの周回も入ってきたときより長い波長でサブパルスを放出します。これにより、ナノ秒のタイムスケールでサブパルスのストリームが生成されます。

彼らはまた、STAMPの空間マッピング部分の技術革新にも忙しく取り組んでいます。たとえば、「スライシングミラー」と呼ばれる巧みな多面ミラーを発明しました。これにより、2台のカメラで3 x 3のサブパルスのパターンをそれぞれ画像化し、合計18フレームのビデオバーストを、すべて高い空間ピクセル解像度で実現できました。

さらに、中川グループは、全く新しいコンセプトの超高速シングルショットイメージングであるマルチカラーSTAMPを開発しました。2色STAMPと呼ばれるバージョンでは、Coherent Astrellaチタンサファイアのフェムト秒増幅器の第2高調波でパルスを生成し、これらの400 nmのサブパルスと基本波の800 nmのサブパルスを組み合わせて使用し、技術を実現しています。このスキームにより、超高速現象の「カラー画像」を取得できるため、これまでにない高速なスペクトラルイメージングが可能になります。

Figure 2

図2 :スペクトラム回路は、周回数、つまり遅延がパルス波長に依存するように配置されています[2]。

 

STAMPによって一部のプロセスを画像化

中川グループはSTAMPを使用して、産業用材料加工やライフサイエンスなど多様な分野のプロセスを検証してきました。

テラヘルツ(THz)波は、材料科学、バイオテクノロジーと医療、電子デバイス、環境などの分野での幅広い応用が期待される電磁波です。超短パルス(USP)レーザは、強力な超短テラヘルツ波を発生させるために広く利用されています。この現象は超短タイムスケールで起こるため、これまでは時間分解ポンププローブ法に基づく繰り返しイメージングでしか観察することができませんでした。

中川助教のグループは、STAMPを使用して強誘電性結晶に超短パルスを照射し、それに伴う超高速ダイナミクスを観察することで、テラヘルツ波発生の瞬間を動くフレームとして捉えることに初めて成功しました。

図3は、4.4 Tfpsで取得したテラヘルツ波の発生と伝播を示しています。最初、格子振動がランダムに励起されますが、徐々に位相が揃い、単一の波束を生成します。この波は、結晶中を光速の約6分の1の速さで伝播します。連続するフレームは、テラヘルツ領域の波長を持つ電磁波であることを示しています。

Figure 3

図3 :単一のUSPレーザパルスで強誘電性結晶の格子振動を励起したときのテラヘルツ(THz)波放射を可視化したSTAMP画像のシーケンス[1]。

USPレーザパルスによるアブレーション

ピコ秒、フェムト秒出力の超短パルスレーザは、精密なマイクロマシニングに利用されることが多くなっています。用途としては、医療機器からスマートフォンの部品に至るまで、製品のドリリング、スクライビング、マーキングが挙げられます。その主な理由は、USPマシニングのほうが長パルスレーザよりも高い精度が得られる点にあります。また、周辺部での熱の発生がほとんどないため、きれいな加工を行うことができます。

このような利点は広く文書化されていますが、実際にどのような仕組みで利点が生じるのかについては、これまで誰も解明していませんでした。中川グループは今回、STAMPを使用してこの議論に独自のデータを提供しました。彼らは、単一の35 fsレーザパルスによるガラスターゲットでのアブレーション作用を画像化したのです。

この用途のために、彼らは有効フレームレートが1 Tfpsを超えるように2色STAMPセットアップを構成しました。図4は、この作業で得られたいくつかのイメージフレームです。オリジナルの2色フレームから電子密度マップが取得されました。チームはこのデータにより、アブレーションレーザパルスによって放出されたプラズマプルームのサイズ、形状、速度、および電子密度分布をマッピングすることができました。

Figure 4

図4 :単一のUSPレーザパルスがガラスをアブレーションしたときに放出されたプラズマプルームを可視化した一連のSTAMP画像[3]。

 

水中での衝撃波の伝播

このグループは光回路と分岐アプローチを使って、もっと遅いタイムスケールでレーザパルスを水中に集束させたときに生じる衝撃波を画像化しました。中川助教は、超音波およびレーザ出力の両方と生体組織との相互作用は、医学的治療、イメージング、ライフサイエンス研究の理解を深めるのに重要であると説明しています。(そして水は生体組織の主成分です。)

図5に示すように、彼らは衝撃波面の伝播をマッピングしました。画像のグレースケールのコントラストは、衝撃波の強度を示しています。中川グループは現在、STAMPで捉えたこれらの動的なイベントを観察することで、衝撃と生体細胞の相互作用の解明に取り組んでいます。

Figure 5

図5 :単一のレーザパルスによって励起された水中での衝撃波面の伝播のSTAMP画像[4]。

 

Coherent Astrellaを採用する理由

中川助教は、STAMP研究に完璧に適合するAstrellaの利点をいくつか挙げています。同助教は次のように述べています。「パフォーマンス面では、Astrellaは高品質の出力ビームを生成します。ビーム品質は画質に直接影響するので、この点は重要です。Astrellaはスペクトルバンド幅が広いので、複数のサブパルスを生成する作業が簡単になり、必要に応じてパルスを35 fs以下に圧縮することもできます。高(7 mJ)パルスエネルギーはもう1つの重要な利点です。出力をSTAMPパルス(光損失あり)として時間的空間的に変調し、パルスエネルギーの一部を使用して2色STAMPのSHGパルスを生成するからです。そしてもちろん、私たちはパルスの一部を使用して、画像化しようとしているエキゾチックな現象を励起します」。

中川助教はまた、Astrellaが手のかからないハンズフリーのワンボックスレーザであることなど、実用的な利点についてもいくつか言及しています。このシンプルな操作性は非常に重要です。レーザははるかに複雑な装置の中の1つの部品に過ぎないからです。同助教は次のように述べています。「ターンキー操作は、STAMPを使用する人がレーザの専門家でなくても、この技術を十分に活用できることを意味します。シンプルなユーザーインターフェースで光源を制御するだけで、必要な出力を正確に得ることができるのです。同様に重要なこととして、Astrellaは安定性と信頼性が驚異的に高く、サービスや予定外の修理やアップグレードは必要ありません」。

同助教は、「私たちはこのレーザが本当に好きです」とまとめています。

「Astrellaは高品質の出力ビームを生成します。ビーム品質は画質に直接影響するので、この点は重要です。Astrellaはスペクトルバンド幅が広いので、複数のサブパルスを生成する作業が簡単になり、必要に応じてパルスを35 fs以下に圧縮することもできます」

– 中川桂一、助教
東京大学

概要

中川ラボは、自らの研究をサポートするために、単一のイベントの超高速度動画を撮影するこの独自の方式を開発しました。今では、継続的な技術革新とAstrellaのシンプルな操作のおかげで、その方式は柔軟で使いやすい技術にもなりました。フェムト秒からナノ秒に及ぶあらゆる種類の高速動的イベントの科学的イメージングを実行する人がこの技術を広く応用できるようになっています。

参考文献

[1] K. Nakagawa et al., “Sequentially timed all-optical mapping photography (STAMP).” Nature Photonics 8, 695–700 (2014)
[2] T. Saiki et al., “Spectrum circuit for producing spectrally separated nanosecond pulse train in free space.” CLEO 2020, Online, May 2020
[3] K. Shimada et al., “Electron density imaging of ultrafast plasma dynamics with two-color STAMP.” ALPS2021, Online, April 2021
[4] T. Saiki et al., “Nanosecond single-shot imaging system with a picosecond exposure time for monitoring the shock wave effects on cells.” Symposium on Shock Waves in Japan, Online, March 2021

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