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ニューメキシコ州立大学: 時間分解フローサイトメトリー

課題

ニューメキシコ州立大学のジェシカ・ヒューストン教授の研究グループは、フローサイトメトリーで時間分解測定を使用できる独特な方法を研究しています。 このグループの重要な研究分野は、蛍光寿命測定を用いて化学療法剤の存在下で癌細胞の活力を評価し、その代謝マップを作成することです。 もう一つの重要な応用は、フェルスター(蛍光)共鳴エネルギー移動(FRET)や蛍光タンパク質を用いて、基本的な細胞シグナル伝達と受容体活性を対象としています。

時間分解フローサイトメトリーは、定常状態の蛍光強度データに依存してカウンティング機能やソーティング機能を実行する既存のほとんどのフローサイトメトリー応用とは明らかに異なるとヒューストン教授は指摘しています。 また、定常状態のデータ向けに最適化された市販のフローサイトメーターは、教授の研究には向いていません。 そのため、教授のグループはまずフローサイトメーターを自作する必要がありました。

蛍光寿命を測定するには、よく知られている2つの方法があります。 それは、パルス発振レーザや他の光源を用いた時間領域、または周波数領域での測定方法です。 ヒューストン教授は、次のように説明しています。「血液中の転移性癌細胞の研究など、膨大な数の細胞を非破壊でカウントまたはソートするには、ハイスループットのフローサイトメーターが必要です。 また、フォトンカウンティングを用いた時間領域での測定は、必要なスループットに対応できません。 そこで、周波数領域で取り組むことにしました。この領域で確立されている方法は、励起レーザに変調を適用し、変調させた蛍光放射で観察された位相シフトを相関させることです」。

 

ソリューション

ヒューストン教授のグループは、NADHやFADなどの代謝物から発生する内因性蛍光を調べることに加え、研究でさまざまなフルオロフォアを使用できる能力を必要としていました。 そのため、これらの異なる標的すべてを効率よく励起するために、複数のレーザ波長が必要でした。 また、良好なモード品質のレーザ(つまりM2が低く、ビームポインティングと出力ノイズの両方で安定性の高い出力が得られるレーザ)も必要でした。

慎重な評価の結果、CoherentのOBISレーザを使用することが決定されました。 ヒューストン教授は、次のように語っています。「現在、波長が375 nm、405 nm、488 nm、633 nmの数台のOBISレーザを所有しています。 これらのスマートなレーザは、私たちの研究に最適です。 これらは高品質の出力に加え、私たちの研究に必要な高速ダイレクトデジタル変調に対応しています。さらに、これらのプラグ&プレイのレーザは、同じ形状と適合性を備えているため、追加や取り外しがとても簡単です」。数十ミリワット、さらに数百ミリワットで利用できることも、OBISの重要な特徴であると教授は指摘しています。 これは、教授の非常に多くの実験が周波数領域の寿命測定に基づいており、デジタル変調によってフローセルでレーザ出力が50%実質的に低下するためです。

 

成果

ヒューストン教授は、自作のフローサイトメーターと、増大するOBISレーザのコレクションが成功をもたらす組み合わせであることを証明し、すでに代謝プロファイリング研究とFRET研究の両方で多くのデータを発表したと述べています。

代謝プロファイリングの場合、教授は、測定する蛍光寿命が、代謝物が評価対象の細胞内で主に結合状態にあるか非結合状態にあるかに依存するNADHの例を引用しています。 これは、細胞がATP(細胞活動の大部分を担うエネルギー分子)をどのように生成しているかと相関しています。 正常な細胞の代謝活動は、主にミトコンドリアの酸化的リン酸化(OXPHOS)に依存してATPを生成しています。 しかし、多くの種類の癌細胞では、解糖がATP産生に大きな役割を果たしてOXPHOSの能力は低下しています。 そこで、ヒューストン教授のグループは、細胞が新しい治療法にどのように反応しているかなどを知るためにNADHの寿命を定量的な指標として用いることができます。

また、同グループは、定量的なFRETデータの高速な取得のためにもこのシステムを活用しています。 さらに、このデータを解析して、タンパク質間相互作用の解明、タンパク質の立体配座研究、酵素の作用の研究などに役立てています。 ヒューストン教授は、次のように語っています。「私たちは、供与体のフルオロフォアが反応を停止した状態にあるかどうかなどを調べることができます。 また、私たちは供与体の発光と受容体の発光の両方を捕捉することもできます。 さらに、このデータは癌治療法の有効性を示すことができます。 要するに、OBISレーザと、私たちのハイスループットサイトメーターは、実に豊富なデータを提供しています」。

 

参考文献:
  1. J. Sambrano, F. Rodriguez, J. Martin, and J. P. Houston, "Toward the Development of an On-Chip Acoustic Focusing Fluorescence Lifetime Flow Cytometer," Frontiers in Physics, 2021 9:253 https://www.frontiersin.org/article/10.3389/fphy.2021.647985
  2. A. Bitton, J. Sambrano, S. Valentino, and J. P. Houston, "A Review of New High-Throughput Methods Designed for Fluorescence Lifetime Sensing From Cells and Tissues," Frontiers in Physics, 2021 9:163 https://www.frontiersin.org/article/10.3389/fphy.2021.648553
  3. K. Nichani, J. Li, M. Suzuki, and J. P. Houston, “Evaluation of caspase-3 activity during apoptosis with fluorescence lifetime-based cytometry measurements and phasor analyses,” Cytometry A, 2020 97(12):1265-1275; PMC7738394  
  4. F. Alturkistany, K. Nichani, K. D. Houston, and J. P. Houston, “Fluorescence lifetime shifts of NAD(P)H during apoptosis measured by time-resolved flow cytometry,” Cytometry A, 2019; 95(1):70-79 PMC6587805

     

 

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「OBISレーザは、私たちの研究に必要な高速ダイレクトデジタル変調に対応しています。さらに、これらのプラグ&プレイレーザはすべて同じ形状と適合性を備えているため、追加や取り外しが非常に簡単です。 これらは豊富なデータを提供しています」。

ジェシカ・ヒューストン教授、ニューメキシコ州立大学化学・材料工学部(CHME)、米国ニューメキシコ州ラスクルス。


 



図1. 時間分解フローサイトメーターの主な要素。

 

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図2. 時間分解フローサイトメーターの組み立て。

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