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KAGRA — 最先端の重力波望遠鏡を支える、低ノイズのMephistoレーザ

課題

岐阜県飛騨市神岡町に設置された大型低温重力波望遠鏡(KAGRA)は、2020年に稼働を開始した世界最大の重力波観測装置です。アメリカにあるLIGO検出器およびイタリアにあるVirgo検出器と同様、KAGRAもまたレーザベースのマイケルソン干渉計です。 重力波がサイトを通過するとき、干渉計の2本のアームの長さをわずかに変化させます。 ただし、KAGRAのアームの長さが3kmであっても、大きな重力波が発生した場合に陽子直径の1,000分の1未満(10のマイナス19乗メートル)の長さの変化が生じる場合があります。 そのため、これらの波を検出する際はSN比が大きな課題となります。

ソリューション

KAGRAは、地下に設置され、地震波ノイズや重力勾配ノイズを低減する初の大型重力波望遠鏡です。 また、熱ノイズを抑えるため、世界で初めて極低温(20ケルビン)での動作を実現しています。 これにあたって、サファイアテストマス(ミラー)を使用する必要に迫られました。サファイアは極低温でも熱伝導性に優れている上、レーザ波長1,064nmの透過率も高いというのが、その理由です。

レーザオシレータには、LIGOやVirgoと同じ理由で、振幅ノイズ、周波数ノイズともにレーザ業界で圧倒的な低ノイズ性を誇るCoherent Mephistoが採用されています。 レーザ共振器全体を単結晶で形成した非平面型リングオシレータ(NPRO)をベースにしているために、もともと安定した性能を備えている上、専用設計のエレクトロニクスによってその性能をさらに向上させることも可能です。 Mephistoによる低ノイズの1,064nm出力を、固体増幅器で60ワットの出力まで増幅させることで、位相ノイズと振幅ノイズをさらに抑制します。 その結果、干渉計アーム内の循環出力レベルは0.4メガワット以下となっています。

東京工業大学の指揮下で稼働するKAGRAは、LIGOおよびVirgoとも連動しており、より精度の高いデータや指向性の高い情報を提供しています。

成果

今後、KAGRAが設計感度に到達すれば、膨大な数の重力波イベントが記録できるものと見込まれています。 エンジニアや科学者は早くも、この干渉計が持つ驚くべき性能をさらに向上させる方法を模索しています。 こうした研究の一部が、KAGRAと提携している東京工業大学の研究室で進められています。 同研究室では、宗宮健太郎准教授のグループがノイズ低減に取り組んでいます。 宗宮准教授は、「KAGRAでは熱ノイズが抑えられているため、今後ほどなくして、レーザシステム内の量子ノイズ、つまり、量子物理学の限界とされているレーザ振幅と位相の不確かさが、データの主たる制限要因となるでしょう。 この量子ノイズを抑制するべく、新たな手法の開発に取り組んでいるところです。 低ノイズ性が売りのMephistoオシレータなくして、この研究は不可能だったと思います」と話します。ここで得た技術を、KAGRA+や他の次世代型重力波望遠鏡にも応用することが、次なる目標です。 宗宮准教授は現在、この最先端技術をまずドイツにある600m級重力波検出器GEO-HFに導入し、kHz領域の感度を向上させることによって、中性子星の合体により発生する時空の波紋の痕跡を鮮明に観測することを目指しています。

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「量子物理学の限界のところで、ノイズ低減手法に取り組んでいます。 低ノイズ性が売りのMephistoレーザなくして、この研究は不可能だったと思います」

宗宮健太郎(東京工業大学准教授)

 



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