拡張現実(AR)の実現

Coherentは複数の主要なARディスプレイコンポーネントを製造しており、技術の向上に積極的に取り組んでいます。

2023年5月23日、Coherent

ARグラス

ここ数年、仮想現実(VR)と拡張現実(AR)は多くのメディアで話題になっています。これらは、ゲーム、医療、トレーニング、エンジニアリング、建築、インテリアデザイン、旅行、防衛、さらに製品マーケティングに至るまで、多様な用途にメリットをもたらすことが期待されています。しかし、現在、VR/ARはまだ多くの人の生活に大きな影響を及ぼしていません。

その主な理由は、VR/ARヘッドセットの品質とコストの2つです。具体的には、画像の明るさ、解像度、視野などの要素や、速度や消費電力などのエレクトロニクス特性も品質として含まれます。さらに、ヘッドセットのサイズ、重量、バッテリー寿命などの実用的な考慮事項も重要です。コストとは、ほとんどの消費者が手にすることができるように、ヘッドセットの価格を十分に下げることを意味します。

 

ARの課題

これらすべての分野で改善を推進するには、克服しなければならない数多くの技術的なハードルがあります。これらの課題は一般的にVRヘッドセットよりもARの方が大きくなります。その理由を理解するために、まず用語が具体的に何を意味するのかを確認しましょう。定義については、表にまとめています。

 

ヘッドセットの種類

機能

ヘッドセットの特性

ユーザーの目を完全に覆い、擬似的な視界を提示する完全没入型ディスプレイです。実際の周囲環境は一切見えません。

ディスプレイは通常、液晶ディスプレイまたは有機ELテクノロジーに基づいています。

ディスプレイはユーザーの目の前に直接あり、レンズを通してユーザーに表示されます。

ディスプレイの輝度要件は、ユーザーが暗い環境で見るため、ある程度緩和されます。 

ユーザーの目を完全に覆いながら、実際の周囲のライブビデオ映像も取り込む完全没入型ディスプレイです。ユーザーの視界では、仮想要素と現実要素が組み合わされます。

周囲の環境を直接見ることができる半透過型ディスプレイです。コンピューターで生成された画像は、現実世界のオブジェクトと並んで、または上に重ねて表示されます。 

ディスプレイは、マイクロディスプレイまたはレーザビームスキャンに基づいています。これらは、ヘッドセット光学系の、ユーザーの目と同じ側に配置されています。 

導波管や半透明のミラーなどの工学コンバイナーを用いて、仮想と現実の景色を融合させます。 

周囲の明るさの条件に合わせた、高いディスプレイ輝度が必要です。

VRヘッドセットやMRヘッドセットの大きな特徴は、ディスプレイを直接見る、つまり目の前に置いて見ることです。そのため、顕微鏡や双眼鏡、レンジファインダーなど、比較的シンプルで一般的な表示光学系を使用することができます。ただし、VR光学系はサイズ的にはかなり圧縮されています。

一方、ARゴーグルのディスプレイはユーザーの視野に入らないため、光をユーザーの目に向けるための高度な光学系が必要です。ディスプレイの出力は、仮想オブジェクトを現実世界にあるように見せるために、装着者が直視している環境と組み合わされる必要があります。これを実現するための光学コンポーネント(通常はビームスプリッターや導波管)は、VRヘッドセットのレンズよりもはるかに複雑で洗練されています。

さらに、コンピューターで生成された画像が現実世界の景色内で正しい位置、距離、方向に表示される必要もあります。これには、ヘッドセットがユーザーの頭や体の動きを常に追跡し、現実の環境におけるオブジェクトの大きさ、位置、方向を決定する必要があります。VRヘッドセットの多くは、頭や体の動きの追跡も取り入れていますが、ARでは一般的にその要件がより厳しくなります。 

 

CoherentではARの未来が見えています

Coherentはすでに、ARシステムのこれらの課題に対して、フォトニクスベースのソリューションの開発に積極的に取り組んでいます。私たちは、ARヘッドセットの3つの機能要素、ディスプレイプロジェクター(またはライトエンジン)、光学コンバイナー、光学センサーに主に注視しています。 

 

ディスプレイエンジン

ARヘッドセットの多くは、MicroLEDやレーザビームを走査する光エンジンを採用しています。Coherentは、MicroLED製造のための主要技術を提供することで定評があります。具体的には、Coherentのツールでレーザリフトオフ(LLO)を行い、サファイアウエハからMicroLEDを分離して成長させます。LLOの後にLIFT(Laser-Induced Forward Transfer:レーザ誘起前⽅転写法)を行うこともありますが、これは当社のUVtransfer(LLOと画素修復/トリミングも行う)で行うことができます。 

また、Coherentは、ディスプレイプロジェクターに使用される小型光学コンポーネントの製造に関する広範な専門知識を備えています。その中でも特に興味深いのは、コリメーション用の「メタサーフェス」マイクロレンズアレイです。

メタサーフェスレンズは、ナノ構造を利用して、入射光の波面を変化させます。この機能は高精度で製造され、MicroLEDアレイの上に厳しい公差で配置することができ、個々のエミッタからの光をコリメーションすることができます。メタレンズは平らで非常に薄いため、ディスプレイエンジンのパッケージにシームレスに組み込むことができます。 

さらなる利点は、メタレンズはリソグラフィーや他のウエハスケール技術を用いて製造できることです。つまり、経済的に大量に生産することができます。したがって、この技術はARゴーグルの要件に理想的に適合します。

Coherentは、光エンジン用の他の光学コンポーネントも提供しています。これには、レーザビームスキャナー(LBS)用のRGBコンバイナーやLCOSディスプレイ用の薄膜偏光板など、さまざまな種類のガラスに塗布したり、ほぼすべての光学素子の光学スタックに組み込んだりできる光学コーティングが含まれます。 

 

光コンバイナー

ディスプレイの出力を収集し、装着者が直接見る周囲の景色と重なって見えるように再出力することは、おそらくARヘッドセットのセット設計における最大のフォトニクス関連の課題と言えるでしょう。これを達成するために、現在、さまざまなグループによって多くの、非常に革新的な設計コンセプトが追求されています。ここでも、Coherentは、これらのデバイスの一部を製造するための技術や、実際のデバイスコンポーネントそのものを提供しています。 

多くのヘッドセットでは、ゴーグルレンズが導波管です。これらは、ディスプレイ(フレーム内に配置)からの光をユーザーの目に向けます。導波管には、ディスプレイエンジンの近くに入力カプラー、レンズの中央に出力カプラーがあります。これらの出力カプラーは、表面レリーフグレーティング(SLG)またはホログラフィック光学素子(HOE)として実装されます。 

HOEはレーザを用いてフォトポリマーに記録されます。具体的には、赤、緑、青の3つのレーザを使用して実現されます。他の形式のホログラフィと同様に、このためのレーザ光源には、単一周波数であること、長いコヒーレンス長を持つこと、高い安定性で動作すること、好ましくは高出力(露光時間を最小にするため)であることが求められます。CoherentのGenesisレーザとVerdiレーザは、これらの特徴をすべて備えており、HOEの記録に最適な選択肢です。

また、Coherentは、レンズ材料そのものを含め、複数の異なるビームコンバイナーコンポーネントを製造することができます。大手AR企業の一部は、ガラスに代わってレンズに光学結晶を使用することを検討しています。結晶材料は、2.3以上の屈折率を持つことができます。これにより視野が拡大し、ガラスを使用する場合に2~3層必要だった3色のチャネリングを1つの導波管で実現することができます。また、ARゴーグルを軽量化して、ユーザーエクスペリエンスの没入感を高めることができます。 

 

光センサー

Coherentは、レーザベースの深度センサーや3Dセンサーのコンポーネントやモジュールの製造において、すでにトップメーカーです。具体的には、当社の高出力VCSEL光源(シングルエミッタとアレイの両方)は、一般的なスマートフォンに広く使用されています。これらの光源には、飛行時間型(TOF)または構造化光深度センシングモジュール用のアレイが含まれます。さらに、VCSELアレイを回折素子やメタサーフェス素子と組み合わせて、均一なフラッド照明やドットパターンを生成することもできます。また、レーザドライバーICの設計と製造も行っており、これらすべてのコンポーネントを超小型モジュールに組み込むことができます。当社のフォトニクス専門家は、ARアプリケーションの3Dセンシングに関しては、小型フォームファクターと低消費電力が重要な指標であることを理解しています。

ARヘッドセットとVRヘッドセットは、次の主要な家電製品やインターネット家電になると考えられています。Coherentは、ARゴーグルの製造に適用可能なフォトニクスベースの技術を最も包括的に保有しています。これにより、普及に必要な超小型、低消費電力、高性能なデバイスを実現する、特に製造ツールやコンポーネントを提供することで、この分野のイノベーションをサポートするユニークなポジションを確立しています。 

CoherentがAR向けに提供しているものについて詳しくは、こちらをご覧ください。