ホワイトペーパー
FLEXTUNEでDWDMネットワークの配備とプロビジョニングを簡便化
Jack Jian Xu博士
電気通信垂直マーケティング担当バイスプレジデント
Coherent
電気通信サービスプロバイダー各社は、これまで数十年間にわたって高密度波長分割多重(DWDM)技術を使用し、光ネットワーク上で伝送できるトラフィック量を増やしてきました。
長距離輸送ルートに導入された初期のDWDMシステムは、個別の光学コンポーネントからなるものでした。その後、長年の開発とさらなる統合を経て、固定波長DWDM方式のXFPおよびSFP+光トランシーバーが現場に導入され始めます。当初の配備先であったメトロネットワーク用途では、単一の光ファイバーで複数のデータリンクを送信することにより、インフラストラクチャの設備投資が効果的に削減されました。ただし、固定波長DWDMプラガブルトランシーバーのユーザーは、それぞれ部品番号の異なる複数の波長固有デバイス在庫を保有する必要があり、それによって運用が複雑化し、運用コストも増加しました。
この非効率を解決したのが、新たに登場した波長可変DWDMプラガブルトランシーバーです。これなら、ネットワークオペレーターはCバンド全体に対応する単一の部品番号を入手するだけで済むため、調達の複雑さや必要な在庫数が軽減されます。図1は、二重および双方向構成の波長可変DWDM SFP+(T-SFP+)トランシーバーです。
しかしながら、可変DWDMプラガブルトランシーバーの配備とプロビジョニングは以下の手順を伴うため、依然として時間がかかります。
- 技術者が、ポータブルチューニングボックスを使用するか、ネットワークオペレーションセンター(NOC)の協力を得て、各トランシーバーを各システムポートの適切な波長へと調整する必要があります。
- また、技術者が各トランシーバーを光マルチプレクサー/デマルチプレクサーフィルターの適切なチャネルポートへと光学的に接続する必要があり、このプロセスはファイバー管理の不備やラベル製作ミスなどで複雑化することがあります。場合によっては、40ポートのマルチプレクサー/デマルチプレクサーがシステムから数キロメートル離れて配置されていることもあり、ファイバー追跡プロセスがますます複雑になります。
このため、40以上の波長を備えたDWDMリンクのプロビジョニングには数時間を要する可能性があり、オペレーターによるさまざまなミスが発生しやすくなります。
図1:二重および双方向の波長可変DWDM SFP+トランシーバー
Flextune™が実現する、DWDMネットワークの配備・プロビジョニング向けソリューション
Flextune™は、Coherentが特許を取得した、プラガブル光トランシーバー用の波長セルフチューニング機能であり、DWDMネットワーク配備時のプロビジョニング時間と運用コストを大幅に削減します。Flextune™を備えたプラガブル自己調整光学系(STO)は、リンクのリモートエンドにあるモジュールへの光路を自動的に検出し、適切な波長へとセルフチューニングを行います。このセルフチューニング機能は、トランシーバーのファームウェアに含まれており、ホストシステムの介入は必要ありません。つまり、Flextune™を搭載したトランシーバーはまさに「プラグアンドプレイ」であるといえます。
Flextune™の代表的なユースケース
電気通信サービスプロバイダーの多くは現在、トランシーバーの波長を自動的に設定できる自己調整光学系を必要としており、Flextune™でこれが実現します。セルフチューニング機能Flextune™は、DWDMリンクの一部が遠隔に位置していてアクセスしにくいメトロおよびアクセス用途で特に有用です。たとえば、ケーブル会社やMSOが主に使用するリモートPHYポイントツーポイントDWDMリンク(図2)、またはワイヤレスネットワークのフロントホールDWDMリンク(図3)などがこれに該当します。
図2 :リモートPHYポイントツーポイントDWDMネットワーク
図3:モバイルフロントホールDWDMネットワーク
もう1つのユースケースとして、波長可変DWDMプラガブルトランシーバーをネイティブサポートしていない2つの機器間にDWDMリンクを配備する状況が挙げられます。データセンターの相互接続(DCI)などがその例であり、トランスポンダーラインカードを使用することなく、T-SFP+トランシーバーを直接スイッチやルーターに接続できます。
Flextune™の最大の機能
Flextune™は、用途に応じてCoherentのさまざまな特許取得済み技術を活用し、セルフチューニング機能を実装できます。
二重T-SFP+トランシーバー
ヘッドエンドと屋外ハブ間のリモートPHYポイントツーポイントDWDMリンク(図2)において、リンクのDWDM部分は、両側に複数ずつの二重T-SFP+トランシーバーで構成され、最大80 kmに及ぶファイバーで接続されます。
Flextune™を採用した二重T-SFP+モジュールをそれぞれのシステムポートに設置すると、以下の状況が発生します。
- 各トランシーバーが、利用可能なすべての波長のスキャンを自動的に開始します。
- マルチプレクサーポートに対して波長が適切でない場合、送信機の信号はマルチプレクサー/デマルチプレクサーフィルターによってブロックされます(図4a)。
- 適切な波長に達するまで、ニアエンドのトランシーバーがスキャンを続行します。適切な波長が見つかると、ファーエンドのトランシーバーとの通信が開始されます(図4b)。
- ファーエンドのトランシーバーは特別なスキャンを開始し、マルチプレクサーポートの適切な波長に達するまで続行します(図4c)。
- ファーエンドのトランシーバーが適切な波長に達すると、ハンドシェイクが行われ、リンクの両側のトランシーバーが適切な波長にロックされます(図4d)。これによってリンクが確立され、通常のデータ伝送が開始されます。
図4(a~d):二重T-SFP+トランシーバーにおける、Flextune™でのセルフチューニングプロセス
上記のプロセスは、Flextune™が有効化されているリンクに設置されたすべてのトランシーバーで同時に実行されます。
双方向T-SFP+トランシーバー
この例において、ベースバンドユニット(BBU)とリモート無線ユニット(RRU)間のモバイルフロントホールリンクは、DWDM部分が、Coherentの特許取得済みのD2WDM™(二重DWDM)技術を活用した複数の双方向T-SFP+モジュールで構成されています。
このシナリオにおけるFlextune™プロセスは、ニアエンドのトランシーバーのみがスキャンを行うという点で、二重T-SFP+とは若干異なります。
- ニアエンドのトランシーバーが、利用可能なすべての波長のスキャンを開始します。
- マルチプレクサーポートに対して波長が適切でない場合、送信機の信号はマルチプレクサー/デマルチプレクサーフィルターによってブロックされます(図5a)。
- 適切な波長に達するまで、ニアエンドのトランシーバーがスキャンを続行します。適切な波長が見つかると、その情報をファーエンドのトランシーバーに伝達できるようになります(図5b)。
- ファーエンドのトランシーバーが適切な波長へと調整され、ハンドシェイクが行われます。これによってリンクが確立され、通常のデータ伝送が開始されます(図5c)。
Flextune™のメリット
Flextune™を使用すると、現場の技術者やホストネットワーク機器の介入なしに、最大96個の波長可変トランシーバーの波長を2分未満で自動設定できます。
Flextune™を搭載した自己調整光学系は、以下のような原理で運用コストを大幅に削減します。
- 波長の設定が自動的に行われるため、配備にかかる時間とコストが大幅に節約されます。技術者は、波長を手動で設定したり、使用する固定波長トランシーバーを選択したりする必要がなく、NOCの協力を得る必要もありません。
- システム内の任意のホストポートに波長可変トランシーバーを技術者で設置し、DWDM光マルチプレクサー/デマルチプレクサーの任意のファイバーポートにジャンパーケーブルを接続できるため、複雑さが軽減されます。
- また、光マルチプレクサー/デマルチプレクサーからトランシーバーまで、ファイバーを手動で追跡する必要もなくなります。
図5(a~c):双方向T-SFP+トランシーバーにおける、Flextune™でのセルフチューニングプロセス
まとめ
Flextune™による波長セルフチューニングは、リモートPHYやモバイルフロントホール、データセンター相互接続などのDWDM用途を扱うネットワークオペレーターに対し、大幅なコスト削減をもたらします。
Coherentの可変DWDMプラガブルトランシーバーに搭載された特許取得済みのセルフチューニング機能により、運用コストを節約できるだけでなく、配備とプロビジョニングの所要時間を大幅に短縮でき、手動操作による人的ミスも最小限に抑えられます。
Flextune™機能を備えたプラガブル可変DWDMトランシーバーは、すでにフル生産段階にあり、ご利用可能です。Coherentの営業担当者にお尋ねいただくか、Eメールで[email protected]までお問い合わせください。