お客様事例

グラーツ工科大学

ウルトラファーストレーザシステムにより凝縮系で初のLAESを実現

課題

材料科学から酵素力学まで、さまざまな分野の研究者が、液体や固体のサンプルをより高い空間的・時間的分解能で調べるためのツールを求めています。 レーザ光学法は、フェムト秒(fs)のタイムスケールに容易に到達できますが、その空間分解能は回折によって制限されます。 逆に、電子線回折は原子レベルの分解能が得られますが、時間的分解能は得られません。 両者の長所を組み合わせる方法として、フェムト秒のレーザパルスを用いて電子と相互作用させる「レーザアシスト電子散乱(LAES)」というメカニズムが考えられます。 しかし、これまでLAESは気相のサンプルでのみ観測されていました。

ソリューション

オーストリアのグラーツ工科大学実験物理学研究所(IEP)のマーカス・コッホ教授は、「LAESでは、電子は強いレーザ光の場により照射され、原子と衝突してエネルギーを得たり失ったりします。 そこで、エネルギー弁別のある電子の検出方法を使えば、レーザパルス中に試料と相互作用した電子だけを検出することができます。 フェムト秒のレーザパルスでは、効果的に同じタイムスケールの電子パルスが得られます」。

大学院生のレオンハルト・トライバー氏が率いた実験で、コッホ研究室は、簡素な凝縮された試料でLAESを試みました。 これらは超流動ヘリウムの微小な液滴(3~30 nm)で、電子源の役割を果たす原子(InやXe)や分子(アセトン)が各液滴に入っていました。 これらの液滴に、3 kHz、25 fsで動作するCoherent Legend Duo増幅器から800 nmのパルスを集光して照射しました。 このレーザ光により、単一粒子ターゲットのしきい値以上のイオン化(ATI)が発生し、その後液滴シェルを形成するヘリウム原子によるLAESが発生しました。 その後、標準的な飛行時間計測を使用して光電子エネルギースペクトルを記録しました。

孤立した原子と単一の液滴の組み合わせでは信号が非常に弱く、一晩かけて合計10時間のデータを取る必要があったため、Legend Duoの安定性は非常に重要だった、とコッホ氏は強調しています。 また、このレーザが8年以上にわたって信頼できる機器としてこれまで役に立っている、と述べています。 「このレーザに注意を払う必要はありません。年に2回程度の最適化が必要なだけです。 これは、信頼性の高い、ハンズフリーのフェムト秒光源です」。

成果

ヘリウムシェルがある場合とない場合の電子スペクトルの比較により、LAESが発生していることが確認されました。 その後、ウィーン工科大学のマーカス・キッツラー・ザイラー氏と、首都大学東京のレイカ・カンヤ氏が共同で徹底的にデータを分析し、モデル化しました。 この画期的な成果は、Nature Communicationsに掲載されました。

 
Legend Duo増幅器に注意を払う必要はありませんでした。非常に信頼性の高い、ハンズフリーのフェムト秒光源です」。

— マーカス・コッホ教授、グラーツ工科大学、オーストリア

            

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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