レーザ冷却

レーザ冷却とは?

レーザ冷却は、原子や分子の粒子を減速させて閉じ込める原子物理学・量子光学技術です。 この手法は、光と物質の相互作用に基づいており、光子が原子に運動量を伝達する仕組みを利用しています。

レーザ冷却の基本原理は、光子の吸収と再放出です。 原子が光子を吸収するとエネルギーが増加し、より高いエネルギー準位に移動します。 その後、光子を再放出すると、エネルギーを失い、より低いエネルギー準位に戻ります。 レーザ冷却で重要なのは、原子が常に運動とは反対の方向に光子を再放出するように確保することです。 これにより、平均して原子が光子から得る運動量よりも失う運動量の方が大きくなり、結果として減速します。 これにより、原子を光学トラップ内に捕らえることができます。

 

レーザ冷却のさまざまな手法

レーザ冷却にはさまざまな手法があり、粒子の種類に応じた使い分けがされています。 最も一般的な手法はドップラー冷却です。これは、中性原子の冷却に使われています。 ドップラー冷却は、原子が吸収する光の周波数が原子の速度に依存することを利用しています。 原子がレーザに向かって移動すると、原子が吸収する光の周波数はより高い値にシフトし、レーザから遠ざかると周波数はより低い値にシフトします。 互いに離調された2つ以上のレーザを用いることにより、原子の動きに逆らう方向に常に光子を再放出させることができるため、冷却につなげることができます。

レーザ冷却のもう一つの手法にシーシュポス冷却と呼ばれるものがあります。 この手法は、荷電粒子であるイオンを冷却するために使用されます。 シーシュポス冷却は、光の電場とイオンの電荷の相互作用に依存しています。 イオンがレーザビーム中を移動するとき、イオンはレーザ強度の勾配に比例した時間変化のある力を受けます。 互いに離調された2つ以上のレーザを用いることにより、イオンが常にレーザ強度の上り坂を移動するようにして、冷却につなげることができます。

また、偏光勾配冷却では、2本の後方励起型レーザビームを使用します。 ここで、2本のビームは直交または反対の偏光状態にあります。 円偏光ビームを使うセットアップもあれば、直線偏光ビームを使うセットアップもあります。 いずれの場合も、冷却のメカニズムは少し複雑であり、原子内の、間隔の狭い電子エネルギー状態の磁気特性(ゼーマン効果)に基づきます。 要するに、この手法では、より一般的なドップラー冷却法よりもさらに低い実効温度まで原子を冷却することができます。 しかし、関係している力が非常に弱いため、原子をあらかじめ冷却しておく必要があります。そうでない場合、偏光勾配によって原子を捕捉することはまったくできません。

ドップラー冷却、シーシュポス冷却、偏光勾配冷却の他に、レーザ冷却の手法には、サブドップラー冷却、分解サイドバンド冷却などがあります。 各手法は一長一短であり、どの手法を選択すればよいかは実験の具体的な要件によって異なります。

 

Laser Cooling Glossary Diagram

レーザ冷却のいくつかの用途

レーザ冷却の用途は数多くあり、多岐にわたります。 最も重要な用途の一つが、物理学や化学の多くの分野で使用される、原子やイオンの超低温アンサンブルの作成です。 たとえば、超低温の原子を使用して、ボーズ・アインシュタイン凝縮や超流動といった基本的な量子現象を研究することができます。 また、超低温原子は材料や磁気系などの多体量子系のシミュレーションにも使用できます。 さらに、超低温の原子は原子時計や重力計などの精密計測や、量子暗号や量子コンピューティングなどの量子情報処理に使用されています。

レーザ冷却のもう一つの重要な用途は、光学トラップによる粒子の捕捉です。 光学トラップは、光の強度が非常に高い、狭い場所にレーザビームを集中させることで作られます。 レーザ強度の勾配によって粒子に力が働くことにより、粒子が所定の位置に保持されます。 光学トラップは、粒子を閉じ込めて統制のとれた方法で操作することができるため、原子分子物理学で広く使用されています。

 

レーザの主な要件

レーザ冷却の実験に使用されるレーザシステムは、いくつかの重要な要件を満たす必要があります。

波長: 最も重要なレーザの要件の一つが光の波長です。 冷却に使用するレーザは、研究対象原子の電子遷移と共鳴する必要があります。 これは、通常、スペクトルの可視領域または近赤外領域のレーザを使用することで達成されます。

出力と強度: レーザの出力と強度は、原子の熱運動に対抗して、原子を閉じ込めるのに十分なトラップ力を提供する必要があります。 そのためには、研究対象種にもよりますが、通常ミリワットから数ワットの範囲のレーザ出力が必要です。

スペクトル純度: レーザ光は単色である必要があります。つまり、原子遷移と共鳴しないサイドバンドやスペクトル線を持っていない必要があります。 スペクトル純度は、レーザが目的の状態にある原子だけを冷却し、それ以外の原子を冷却しないことを担保するために重要です。

高い安定性/低い光ノイズ: レーザ冷却の実験には、高い安定性を備えたレーザシステムが必要です。 この安定性は、レーザの周波数と強度を時間と共に同じに保つために必要で、トラップの維持と原子の冷却に重要です。

ビーム品質: レーザ冷却の実験では、レーザのビーム品質も重要です。 定められたトラップに原子を閉じ込めるためには、形状やサイズが明確に定義された高品質のレーザビームが不可欠です。

SureLock半導体レーザモジュールなど、Coherentのいくつかの異なるレーザは、冷却やトラッピングの用途に役立ちます。 最も要求の厳しいレーザ冷却の用途では、Coherent Mephistoなどの最も安定したレーザが必要です。 

 

詳細については、次のホワイトペーパーをお読みください。

安定性の高い原子冷却用レーザソース

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